茶席の床には禅語の書が掛けられることがよくよくございます。
私はそんな書の中でも、人生においてポジティブになれる、そして自身に喝を入れるような言葉を好んでおります。
風従花裏過来香(風は花裏より過ぎ来たりて香し)『禅林類聚』
「水は竹辺より流れ出て冷やかに 風は花裏より過ぎ来りて香し」からとられた句で、字義通りに解釈すれば、竹林から流れだす水はとくに冷たく、花々をすぎて渡ってくる風の香りは一段と芳しいという意味になる。しかしこの句の本当の意味は、多くの人々の賞賛を受けるに値する人はさまざまな経験や艱難辛苦をへてきていることを見逃してはならない、ということである。
源句は上の句、下の句ともに美しいひびきを持っているから好んで茶掛として用いられるけれども、それが象徴するものを理解すればさらに味わい深い一句となるであろう。
説明引用
「茶席で役立つ禅語ハンドブック」 朝山一玄著 淡交社
人生をより深きものにするには、人に見えぬところでも様々な経験を積み重ねて、はじめて味わい深いものになるということでしょう。